はじめに
こんにちは、山形の五つ星お米マイスター・尾形です。
鰻重の美味しさは「どんなお米と合わせるか」で格段に変わることをご存知でしょうか?
今回は、145年続く米屋の経験を活かした「鰻重専用オリジナルブレンド米」の開発秘話をご紹介いたします。
濃厚な鰻のタレと脂の旨みを最大限に引き立てる、まさに「運命の組み合わせ」の誕生物語をお楽しみください。
なぜ鰻重にはお米選びが重要なのか?
鰻重の美味しさを決めるのは、鰻だけではありません。土台となるお米の選び方こそが、この料理を極上の一品にする鍵なんです。
お米マイスターとして30年以上活動してきた経験から、鰻重には4つの条件を満たすお米が必要だと確信しています。
第一に「濃厚なタレを受け止める力」
鰻のタレは甘辛く濃厚な味わいです。この強い味に負けない米の旨みが必要です。
第二に「脂をさっぱりと流す特性」
鰻の脂は美味しいですが、重たく感じることもあります。お米の粘りとあっさり感のバランスが重要です。
第三に「いつでも食べやすい食感」
年間を通して楽しまれる鰻重には、重すぎず、でも満足感のある食感が求められます。
第四に「冷めても美味しい特性」
テイクアウトやお弁当として楽しむ機会も多い鰻重ですから、時間が経っても美味しさを保てることが大切です。
これらの4つの条件を満たすには、「つや姫」や「コシヒカリ」などの単一品種では限界があり、条件に合う品種を選んでブレンドする必要があります。
複数品種をブレンドすることで、単一品種では出せない味わいや食感、料理との相性を最適化できるのです。
運命の出会いから生まれた「鰻重米ブレンド・最上(もがみ)」
今回ご紹介する「鰻重米ブレンド・最上(もがみ)」は、その名の通り、鰻重に最適化したオリジナルブレンド米です。
この「最上」が誕生したのは、忘れられないお客様との出会いがきっかけでした。
最初にご来店いただいた時は、職業も詳しいご要望も明かされず、ただ「理想的なお米を探している」とだけおっしゃいました。
何度もブレンド比率を変えて試していただく中で、スタッフと「なぜ、こんなに真剣に試されるのだろう?」と話したのを覚えています。
10回以上の試行錯誤を重ねた末、ついに「これだ!」というブレンドが完成した時、そのお客様から驚きの告白をいただいたのです。
「実は私は鰻屋の店主で、鰻重に合うお米を探していたんです。一番求めていたのは、タレをかけた時にいかにふっくらした状態で食べられるか、という点でした。このブレンド比率が最高でした。」
その瞬間、すべての謎が解けました。
実際の開発では、ササニシキとコシヒカリの比率だけではなく、他の銘柄も使いサンプルを作り試食していただきました。求めるレベルをクリアするために、私たちも本気で取り組みました。
ご納得いただいた後も、「コシヒカリの割合を増やして、少し粘りを足したい」といった細かなオーダーを随時いただける、まさにプロフェッショナルなお客様でした。
ついに完成!プロの料理人に認められた本当の鰻重専用ブレンド米
この特別なお客様との出会いで発見した黄金比は、企業秘密の配合バランスです。
ササニシキのスッキリとした食感と、コシヒカリの程よい粘りと甘み。
この2つの名品種の配合バランスが、プロの料理人が求める基準をクリアした時の喜びは、お米マイスターとして特別なものでした。
つまり「最上」は、プロの料理人に認められた本当の鰻重専用米なのです。
鰻の美味しさを引き立て、鰻のタレとも完璧に調和する。この黄金比により、鰻重全体の味わいに一体感が生まれ、最後の一粒まで美味しくお召し上がりいただけるお米が完成しました。
残念ながら、この鰻屋さんは引退されてしまいましたが、まさに「惜しまれながら」という表現が当てはまる、後世に残したかったお店でした。
しかし、この鰻屋さんで培われた「最上」ブレンドは、このまま埋もれさせるには勿体ない完成度の高いブレンド米です。
今後は多くの方に召し上がっていただいて、ブレンド米の真の魅力をお伝えできるお米にしていきたいと考えています。
美味しい鰻重の炊き方とお米の楽しみ方
「最上」ブレンド米を最大限に活かすための炊き方のコツをお教えします。
- お米を研ぎすぎないこと。3回程度、優しく研ぎます。
- 最後の研ぎ水が少し白く濁る程度で止めるのがポイント。
- 水加減は通常よりもほんの少し少なめに設定。
- 炊飯器で炊く場合は、炊き上がり後に10分間蒸らしてから混ぜてください。
このコツを押さえていれば、ササニシキのあっさりとした食感とコシヒカリの粒感の両方が活かされ、鰻のタレが程よく染み込む仕上がりになります。
特別な楽しみ方のご提案
鰻重を食べる時、鰻を食べたくなる気持ちを少しだけ抑えて、まずはタレだけをかけたご飯を味わってみてください。
ササニシキのスッキリさにタレがよく絡み、コシヒカリの程よい粘りと甘みが、タレの甘辛さと絶妙に調和する瞬間を体感できるはずです。
そして、その後に鰻と一緒にごはんを食べると、より美味しく、より楽しく鰻重を召し上がっていただくことができます。
まとめ:年中楽しめる極上の鰻重体験を
今回ご紹介した「鰻重米ブレンド・最上」は、お客様との出会いから生まれた特別なお米です。
10回以上の試行錯誤を重ねて見つけ出した黄金比が、鰻重をより美味しく楽しんでいただくための秘密です。
145年続く米屋の技術と経験が生み出した「最上」で、いつでもご家族皆様の食卓に特別な時間をお届けします。
お米を通じて、食卓に笑顔が広がることを心より願っております。